大電力の送電のために電力ケーブルというものが使われます。
用途に応じて色々な種類がありますが、どのケーブルであっても使用電圧が低圧・高圧・特別高圧と高くなるに従い、
電力ケーブル内の構造も複雑な絶縁構造となっていきます。それと同時に製作精度の高さを感じさせる構造美をも感じさせてくれます。 強電系学科を経た方にはお馴染みですが、今回は高圧用電力ケーブルの展示品チックな製作を行ってみようと思います。 |
①材料入手 ひょんな縁から廃材の高圧CVケーブル(250[sq](=250[mm²])・6600[V])を入手することができました。長さは1[m]あれば十分です。 (正確には、CVケーブルに耐火性能を持たせたFPCケーブルというヤツです) ②図面 色々な"魅せる"剥き方はあると思いますが今回は 電材堂(https://www.denzaido.com/) のHP内の商品ページ 住電日立ケーブル【切売販売】6600V トリプレックス形架橋ポリエチレン絶縁ビニルシース電力ケーブル 250m㎡ 10m単位切り売り 黒 6600V-CVT250SQ×10m https://www.denzaido.com/page/42570/ この剥き方を参考にして、同じ剥き方をしたケーブルを三本用意します。 今回はこのような寸法で剥くことにします。 ③切断加工 時間と労力をかければ金ノコで切れないこともないですが、切断面を美しく仕上げるため高速切断機を使います。 ④切断終了 切断して三本束ねるとこんな絵面です。切屑は乾いたぞうきんなどできれいにしてしまいましょう。 ここで大事になるのは ・切断面を素手で触らない(銅は素手で触るとすぐ錆びる) ・切断面にはさび止めスプレーをする。 ということです。美しく仕上げるために、切断後はすぐに行いましょう。 ⑤必要な道具・工具 ここまでが下準備です。これからケーブルを剥く作業に入りますが、必要なモノは概ね以下の通りです。 ・カッター ・パイプカッター ・養生テープ ・マスキングテープ ・スケール ・油性ペン ・ニッパー ・多用途用接着剤 ・さび止めスプレー(金属用・クリアタイプ) ・インシュロック ・安全メガネ ・展示表示用銘板(ラミネート加工済み) ⑥シース剥ぎ取り 実際の工事での剥き取りはカッターでやりますが、今回は展示品製作なので切断面を直角にまっすぐきれいに剥きたいので、 パイプカッターを使います。 キツく切り過ぎますと中の遮へい銅テープも切ってしまいますのでほどほどに。 ⑦押え巻マスキング 10[mm]幅のマスキングテープをシース切断面の根元から巻きます。これも、まっすぐきれいにカットするためです。 ⑧押え巻カット マスキングテープの端に沿ってカッターで軽く切り目を入れるとペリペリ剥けます。 押え巻をカットすると遮へい銅テープが見えてきます。 ⑨遮へい銅テープカット 難所その1 そのままにしてると遮へい銅テープがほどけてきますので、養生テープで仮押えます。 そして図面通り、10[mm]幅を残すようにカットします。(粘着面のべたべたが残らないようなマスキングテープだったら 上記のように10[mm]幅で巻き付けてもいいかもしれません) "遮へい銅テープ"というくらいですから薄いは薄いのですが、そこは腐っても金属なので、意外と力を込めて切る必要があります。 ・・・が、さらにその下の外部遮へい層を切らないよう力加減を調整する必要もあります。 まずは"切る"というより、"切れ目を入れる"という程度にカッターの刃を当てるのがいいでしょう。 ある程度切れ目を入れたら、カッターの刃を当てつつ遮蔽銅テープをめくっていくとカッターの刃に沿って切れていきます。 作業全般的に、カッターに力を込める必要もありますし、遮蔽銅テープの端で手を切る恐れもあるし、 なおかつ銅なので素手でべたべた触ると錆びてくる部分なのでここの作業は十分注意して行います。 遮へい銅テープのカットが終わると今度は外部半導電層が見えてきます。 次の作業に行きたいですが、その前に、遮へい銅テープの端が浮いてきますので遮へい銅テープの内側に、接着剤をつけて接着します。 接着剤をつけるには、切り取った遮へい銅テープを使うのがよいでしょう。 ⑩外部半導電層のカット 抑え巻と同様の手順でカットできます。遮へい銅テープをカットすることに比べると力もいらず、驚くほど簡単にカットできます。 また、遮へい銅テープの時と同じように、カットした端は接着剤で接着します。はがれないようにマスキングテープを貼って養生します。 ⑪絶縁体カット 難所その2 ここも本来の工事であればカッターで剥きますが、今回は展示品製作なので(以下略) 再びパイプカッターの登場です。 これでカットしている間はまだ楽です。 刃を一番奥まで到達させても、中の導体までは届きませんので、切れるところまで切りましょう。 さて、気をつけなければいけないところがやってきました。 カットした分厚い絶縁体の剥ぎ取り作業です。 カッターを使ってきちんと切り込みを入れたり、ニッパーなどの工具を使って剥ぎ取りを行わなければなりません。 かなり力のいる作業なのでケガには十分気をつけます。 ⑫カット完了 全部剥けるとこんな感じです。先ほどから再三書いてますが、銅の部分には素手で触れないようにしましょう。 また、好みに応じて内部半導電層を残してもよいでしょう。ヤワな素材でボロボロ崩れやすい素材で 扱いづらいので今回は絶縁体と一緒に全て切り取りました。 これまでの作業をケーブル3本分行います。 その後、さび止め塗装をするので、塗装がかかって欲しくないシースには養生テープをガッツリ巻きます。 これまで剥いた部分にしていたマスキングテープ等々はここで全てはがしてしまいます。 ⑬さび止め塗装 金属用で、クリアな塗装なら何でもいいと思います。 いくらきれいに剥けても、そのままですと時間経過で錆びてくるので塗装は必須です。銅部分はしっかりと塗装しましょう。 スプレータイプですと、メガネに塗料が飛んだりするので安全メガネを着用しておきます。もちろん、塗装は屋外で行います。 ⑭完成 さび止め塗装が乾いたら養生テープをはがし、清掃してからインシュロックで三本のケーブルをしっかりと縛り上げます。 ここまできたら、銅の部分も塗装されているので素手で触っても大丈夫です。 今回はケーブルの種類や太さなどを書いた銘もラミネートして用意しましたので 一緒に縛り上げて、持って触って遊べる高圧ケーブル展示品の完成です。 まとめ ・全般的に力のいる作業・刃物を使う作業なのでケガには気を付けて。 ・250sqの高圧ケーブルともなると、もはや"棒"です。 ・250sqの太いケーブルですが、一本だけだと寂しさを感じます。実際の送電では三本一組なので、 ここはやはり三本用意して、CVではなくトリプレックス型のCVTにしたいところです。 ・高圧ケーブルなので絶縁体も分厚く、層も多層なので剥くのはかなり大変ですが、低圧CVTケーブルであればずっと楽です。 ・実はシース剥ぎ取りの時に遮へい銅テープまで切ってしまうというドジを一本やっていますが、 それも寸法通りにカットして接着剤で貼り付けています。意外と違和感ないです。 ・接着条件がかなり厳しい(金属・ポリエチレン等)ので、わりとハイスペックな接着剤が必要になります。 ・もちろん、メーカー等で作った展示品にすれば工作精度は見劣りしますが、手作り感があって重厚感のある展示品が出来たと思っています。 |